イオンがいなげやを子会社化、にショックを受けたワケ

一昨日の夕方、仕事を終え「さぁ飲み会（M-styleさん＆江戸目高さん＆らんちゅう師匠との）に行こうか」とルンルン気分でいたところ、何気なくYahooトピックスを見たら驚きのニュースが・・・。あまりにビックリで一瞬意識が飛びました。

news.yahoo.co.jp
東京埼玉千葉神奈川に約１３０店舗を展開する食品スーパーいなげや、はいわば私の母校。大学を出て新卒で就職し３５歳までお世話になった会社でした。

ここで２８歳の時に人事部へ配属されたことが人事マンとしての私のキャリアの礎。また人事部は経営者にとてもとても近いポジション。自分自身のまだ未熟な実力、若さ、高くはない地位以上の景色をたくさん見せていただいたことは今の社長業の血肉となっているのです。

学歴エリートでもなく、野心もない社会人だった、そんな私に高いところからの景色を見せてくれて人生のステージを押し上げてくれたこの会社には感謝の気持ちでいっぱいです。

もしヨーカドーとかイオンに就職していたら社内競争倍率が高すぎて私はその景色を見ることができなかったでしょう。大手に入らず中堅（とは言え上場企業ですが）に入って本当に良かったと思い、この会社を心から愛していました。

イオンはかなり以前からいなげやの筆頭株主ではありました。しかし株式の所有比率は１７％程度に過ぎなかったためその影響は軽微なものでした。例えば堀切めだかの株式会社ちかなりは私が８８％の株式を所有しています。他の１２％の株主によって私が解任されたり、経営の方針を大きく揺さぶられることはありません。

しかしもし、私以外の誰かがちかなりの株式を５１％以上所有したらどうなるか。私はその人にいつ解任されるかわからない立場となります。さらには現在住んでいる堀切めだか１号店のビルも会社名義物件なので立ち退きを命じられるかもしれないのです。住まいと仕事、生殺与奪の権が他人に握られてしまうわけです。

イオンが所有するいなげやの株式が１７％→５１％になるという事はその位大きな意味を持つのです。

まぁ今回は友好的な提携に基づくアクションのようですので、いなげやの生え抜き社員が出世にハンデを負ったり、いなげやの看板がなくなるという事はないと思われます。これは数年前に同じくイオンの傘下に入ったマルエツの現状から推測できます。（マルエツはその後も看板は消えず生え抜きの人が社長になっている）

では今回、イオンがいなげやを傘下に入れる目的は何なのか。それは社長のコメントでも述べられている通り「スケールメリット」。店舗数や会社の規模が大きければ大きいほどプライベートブランドを中心とした商品開発のレベルが上がります。価格を下げて、利益率を上げて、品質を上げることができます。物流やシステム開発投資にも有利に働くでしょう。

すでに巨大なイオンですが、セブンアイグループの規模と商品力も強力です。当然安心はしていられないのだと思います。

一方、いなげやが今後徐々に失っていくものは何か。

いなげやらしさ、いなげや特有の理念、いなげや特有の哲学、なのでしょう。

ところで２３年前、３５歳で愛するいなげやを辞めた理由は何なのか。一番大きかったことは店舗数がその時すでに１２０～１３０で停滞。あと２５年、定年まで働いても２００店をこの会社は目指さないと判断したからでした（この予想は当たりました）。

昭和の時代、日本の大手流通企業のほとんどの会社が黎明期に取り入れて学んだ「チェーンストア理論」。その最大の教えは「２００店舗を目指し商品開発力をつけよ」というものでした。しかし２００店舗に至るまでには人材、組織、店舗開発、店舗づくり、オペレーションシステムなど様々な課題があります。チェーンストア理論はそのノウハウの細部を教えてくれました。

しかし志半ば、５０店とか１００店になると上場もします。創業家は巨万の富を得ます。地元の名士になります。高級車に乗ります。すでに立派な会社ですから社員も守りに入る文化が根付きます。

独自の社内哲学を確立し、それを愛するゆえに「２００店とかチェーンストア理論って時代遅れじゃね？」って否定を始めます。それが２００店を超えられなかったスーパー業界に多々ある企業群なのです。で、結果イオンへ。

私が堀切めだかの店舗数をどんどん増やす理由がお判りいただけましたでしょうか。

堀切めだからしさ、堀切めだか特有の理念、堀切めだか特有の哲学

を永遠に不滅にしたいからなのです。

さて、本件に関する下衆な話をもう一つ。

実は半年くらい前にいなげや株を１２０万円ほど所有していました。が、一時株価が上がって１０万プラスになったところでルンルン気分で売却。今回のニュースで昨日はストップ高。今日もアップ。保有していたら二日で５０万円くらい儲かったのにーーー

ってね。

（後日イオンがいなげや株を３４％分株式公開買い付けすると思われる→この場合株価が激しく上がる）

実はこれも一昨日、このニュースにショックを受けた一因でした。

結局私のいなげや愛は中途半端なのかもしれません。

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