無人販売所泥棒の裁判開始、傍聴レポート

今年の7月から8月にかけて複数回発生した、堀切めだか1号店の無人販売所での現金窃盗事件。

8月18日に犯人が逮捕されてから約2ヶ月。ようやく裁判が開始されました。ちなみに犯人はこの間、今日に至るまで牢屋に留置され続けています。

今日の裁判で原告の席に座るのは検事さん。被害者である私に出廷の義務はないのですが、今後の勉強のために傍聴席で裁判を見守ることにしました。

場所は霞ヶ関にある東京簡易裁判所。堀切から自転車と電車を乗り継いで約1時間。

裁判所は地上19階、地下３階建ての巨大なビル。入口のセキュリティは厳しく、飛行機に乗る時と同様の手荷物検査がありました。ただ、名簿への署名などはなく、誰でも入館することはできます。

部屋は第534号法廷。エレベーターに乗り5階へ。

裁判は午前10時開始ということで、9時45分に傍聴席へ入ったら、知らない人が10人くらい傍聴席にいました。が、私は過去に何度か裁判傍聴を経験しているのでこの状況をすぐに理解できました。おそらく何か別の事件の判決がこのあと9時50分から言い渡され、それが10時前に終わるのだなと。判決は通常、短い時間で終わるのです。

直後に警官2人に挟まれ手錠をかけられた涙目の若い女の子が入廷してきました。直後に裁判長が入廷。傍聴者含む全員が起立して一例。判決が言い渡されました。そしてこの件はメダカ泥棒案件にも参考になるものでした。

被告は20歳の女性。事件はドラッグストアでの約8万円の万引き。彼女には前科もあり執行猶予中の犯行だったことから、今回は10か月の実刑判決でした。

この女の子の判決事例から判断すると初犯のメダカ泥棒が実刑判決になることはまず無いだろうということがわかりました。

さて、予定通り進行してその件は9時58分に終了。直後に無人販売所泥棒のO被告が警官2人に手錠付きで連れられて入廷してきました。

裁判は40分かかりました。結論から言うと求刑は懲役1年半。判決は次回、11月1日に言い渡されます。が私の予想では懲役6か月くらいが執行猶予付きで言い渡されるのでは無いかと見ています。

今回の裁判で初めて様々な犯人のバックボーンが明らかになりました。O被告は57歳。本籍は足立区にあるものの住所は不定（つまりホームレス）。身寄りや友人はなく、兄が1人いるものの連絡を拒まれている状態。前科はなし。

学校を卒業後、職を転々。一年前に最後に勤めていた派遣先が期限満了。社宅も出ることとなり15万円の所持金で漫画喫茶での無職生活。その後所持金が底を付き、東綾瀬公園でのホームレス生活に。水を飲んで空腹を凌いでいた所、堀切めだかの無人販売所を見つけ現金窃盗に至ったとのことでした。

気になったのは堀切めだかから捕った金だけでは数ヶ月も食えるとは思えず、他でもスーパーなので万引きをしていたのでは無いかなど考えられる点。ですが、余罪について今日は一切触れられず。

犯人は全面降伏と言った感じで、傍聴席の私に視線を送ることも一回もありませんでした。供述も概ね嘘はなさそうで、「社会復帰したらとにかく仕事をして普通の生活をしたい」と。

派遣の仕事が満了になった時点で、所持金はわずかで携帯電話もなし。家も身よりもなし。

「役所に相談するとかは考えなかったのか？」と検事さんは追求していましたが、そのやりとりはまさに暖簾に腕押し。

知性とか行動力とか判断力がないからホームレスになっているわけで、清く正しく逞しく王道を生きてきたであろう検事さんから正論やあるべき論を言われてもこれは響かないだろうと思われました。

それにしても一番印象に残ったことはこの件にいくらの税金が使われているのだろうか、という事。

裁判資料のファイルはゆうに100ページを超えるであろう分厚いものでした。これは複数人の刑事さんが膨大な時間をかけて作成したもの。これが検察に引き継がれ、担当検事さんが隅から隅まで読み込んで理解したうえで裁判で原告の私を代弁。さらにこれを被告の国選弁護士さんと裁判長が読み込んで深く理解をする作業があるわけです。

裁判長、検事、弁護士。みんな誰よりも勉強して誰よりも努力して、誠実に仕事して、時給も安くは無い方々。もちろん刑事さんも。本件に関わったそんなみなさんの人件費は税金から出るわけです。その総額は私の見立てでは軽く数百万円。

当社と私個人がこの一年で収めた税金と同等か、それを超える額が、このしょーもないホームレスのちょっとした出来心に対し、正しく制裁をするために使われるのです。

おそらく被告は懲役何年を喰らおうがノーダメージ。公園での空腹なホームレス生活よりは飯が食えるだけ嬉しいはず。不起訴になって社会に返される方が辛いはず。

だけど、こういう人を社会で泳がせちゃうと、私たちは安心して暮らせないのです。だから私が望むことはこの人をどこか無人島に追いやってほしい。どうせ弁済能力もないし、刑務所生活なんか彼にとっては嬉しいだけだから。

がそうはいかないんですね。

弁護士さんにとっても検事さんにとっても、落とし所がわかりやすい、きっとやりがいのない案件なのだろうと思いました。私が堀切めだかを始めたことが彼らにつまんない仕事をさせてしまったと思うと本当に申し訳ないです。

ところで、裁判の途中、なんとあの阿蘇山大噴火さんが傍聴席に入ってきました。

裁判傍聴芸人としてエンタの神様などに出演して有名になった人。だけど5分くらいで途中退席。この裁判はネタにならないと思ったのでしょう。そりゃそうだよな。

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