観賞魚の異業種交流会で得る学び（１）

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最寄り駅近くの居酒屋にて。

写真右の方はらんちゅう飼育歴30年以上（協会系）。そして中央の方はなんと60年以上（宇野系）。

この居酒屋には週に一度くらいのペースで通っています。らんちゅうの大御所の方々が集う居酒屋。私はここを「堀切らんちゅう大学」と呼んでいます。

協会系の協会とは日本らんちう協会のことを指します。目指すのは品評会での入賞。まず魚をある程度の大きさに仕上げること、そして美しい尾型を持ち合わせていないと戦いの舞台にすら立つことができません。多くの方が春に採った卵をその年の秋に13cm前後まで仕上げ、品評会で勝負するという戦いをしています。人間でいえば相撲取りサイズ。命がけレベルで餌を食べさせて大きくします。なので優等魚を「大関、関脇・・・」といった表現がされるようです。（横綱は3年連続で大関を獲得した魚にのみ与えられる称号＝滅多に出ない）

一方、宇野系は尾型や大きさは追求しません。むしろ当歳時に大きくすることは罪悪である、というくらいの世界です。当歳でデカくするとらんちゅうは崩れる、5歳、6歳まで育ててみないと本当に良質な魚かどうかわからないし、そこまで確認したうえでの良魚の子を残していかないとらんちゅうは劣化する、という考えです。尾型ではなく特に頭（のコブ）と胴の形質を重んじます。

中央の先生（とお呼びしています）は協会系品評会には1ミリの関心もありません。60年以上かけてらんちゅうを劣化させずに伝承していく作業をひたすらされているわけです。

興味深いのは当歳での美しさや大きさ、そして尾形の美しさを追求するとらんちゅうは累代を重ねるうちに劣化するという点です。劣化するのは頭と胴です。円筒形の胴こそがらんちゅうらしさであり、尾がきれいに開くことと円筒形の胴を保つことは骨格の構造上矛盾するものだ、ということのようです。円筒形ではなくフナのように背中が高い方が大きくなりやすいし、きれいに開いた尾になりやすいのです。

協会系では「大関の子は大関にあらず」という格言があります。尾型や当歳での大きさを追求すると子孫が劣化するという話とここでつじつまが合います。

さて、メダカはどうなのでしょう。

尾型や頭という価値観はメダカには全く関係ないのですが、例えば「ラメの密度を高める」といったメダカの改良方向についてらんちゅうに近い事象があるのではないかとみています。累代するごとにラメの劣化が起こり悩んでいるというメダカ仲間がいます。当然ラメの濃い親を種にするわけですがそうは簡単にいかないようです。ラメの濃い親同士をかけ合わせればどんどん濃くなる、という単純な話であればメダカ市場には濃密なラメのメダカが安価で大量に流通しているはず。でもどうやらそうではありません。

またらんちゅうの色は赤と白と紅白があるわけですが、色変わり前の幼少期の飼育方法で紅白の出現率が変わったりするのです。さらには種親に使うべき色の点も驚きの事実があります。巣赤の親から更紗（紅白）の子は出るが紅白や白を種親に使うとどんどん真っ白に向かっていくというものです。このあたりもメダカに通ずる何かがあるかもしれません。人気のメダカ「雲州三色」の作出者の方が出雲なんきんという金魚の会の会長さんだったという話も興味深いところです。

品評会には興味がなくらんちゅうの形質維持にうちこんでおられる先生は巣赤のらんちゅうしか種親には使いません。これをメダカにそのまま当てはめるとしたら紅白や三色のメダカは赤の比率が高いメダカを種にした方がいいということかもしれません。

いずれにしてもまだ歴史の浅い改良メダカの世界。100年以上の歴史があり、経験60年という方の話が聞けるらんちゅう界に学ぶべきことやヒントは必ずあると思っています。

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